「ごめんなさい!」
屋上にて
あたしは琴平さんに全力で頭を下げていた。
「琴平さんのこと応援するって言ったのに、あたし…」
「…もーいいから。顔あげてよ」
カシャン、と音がして
顔をあげるとフェンスに寄りかかり、困ったような顔してあたしを見る琴平さんがいた。
「…あたしこそごめん。
あたし知ってたよ。
笑佳ちゃんの気持ちも、悠の気持ちも」
…それって。
あたしが若宮の気持ちに気付く前から、琴平さんは分かってた、ってこと…?
「知ってて頼んだんだ、あんなこと。
どうしても悠が欲しかったから」
はぁ、と軽くため息をついて、空を仰ぐ琴平さん。
「でもダメだった!玉砕。
あたし可愛いから告られることはあっても、振られたことなんてなかったのに」
…え?今、自分で可愛いって言った?
や、確かにメチャクチャ可愛いんだけど。
なんか…
「なんかキャラ違うって思ってるでしょ?」
「え゛」
ズバリ、思っていたことを言い当てられて
喉の奥から変な声が出た。
琴平さんはそんなあたしをおかしそうに笑うと
「誰でも好きな人にはよく思われたくて猫とか被っちゃうでしょ?
まぁそーゆーこと」
じゃーね、フェンスから身を起こし出口に向かって歩いていく琴平さん。
「…あの、琴平さん」
「汐里でいいから」
琴平さんは振り向くと
「あたし名字で呼ばれるのあんまり好きじゃないからさ」
―――そういえば琴平さん――――汐里は
あたしのことずっと下の名前で呼んでくれてたな。