――「勝(まさる)、醤油、取って。」
私が組員に話し掛けると、皆は一瞬、本当に一瞬だけ静まりかえった。

「あ、はい、どうぞ。」
「ありがと。
‥私、あんた達信じるよ。
家族だから。
でも、裏切れば容赦なく殺すから。
ジワジワと‥‥。」
魚を食べながら平然と言う私。

また静まりかえった。
「なに」
顔を上げると皆の視線が私に向けられていた。

「気持ち悪。」
そうつぶやいて、クスリと笑う私。
「改めて、これからよろしくじゃん?」
「「おぉーー!!!」」

嬉し泣きをする奴もいれば、抱き合う奴らもいた。

「皆、椿が信じてくれるのを待ってたんだな。」
そう言って微笑む兄ちゃん。
「椿、一歩進んだな。」
父さんは、涙をうっすらうかべて微笑む。

「兄ちゃんの、おかげだよね。」
私はそうつぶやき、立ち上がった。
「ごちそうさま。」
後頭部をポリポリかきながら、その部屋を出た。