「椿、飯食いに行こうか。」
「入れ代わりで行こうよ。」
「そいつは組員に見張らせとくから。」
組員?
信じられるかっつーの。
「椿、組員は信じて大丈夫だよ。
なんせ俺が見極めたから。」
私の頭に手をおきポンポン、とすると、兄ちゃんは微笑んだ。

――母さんは、山本組の組員に殺された。
有り得ない裏切り行為だった。
それから私は、いや、私と兄ちゃんは、家族みたいだった組員を、信じれなくなった。

私と兄ちゃんは、裏切り者がまたいたら嫌だから、動揺などをする奴を見極めたりしていた。
家にいても、警戒心は消さず、寝ているときでさえ、ピリピリしていた。――

「裏切り者は、もういない。
だろ?」
でも、いるかもしれない。
私達が見逃しているだけで、裏切ろうとしている人がいるかもしれない。

私、兄ちゃん、父さんの命を狙っている人がいるかもしれない。

「椿、組員は家族なんだ。
もう、誰も裏切らない。
組員は、裏切ればどうなるか、もういたい程わかってるから。」

兄ちゃんがそこまで言うなら‥。

「信じる努力、してみる。
でも、私は家族以外は信じれないよ。
いくら兄ちゃんが言っても。」
兄ちゃん、父さん、組員。
それ以外は信じない。

「組員さえ信じれればいいよ。」
優しい笑顔が私を包む。

「さて、腹減ったし、飯、食べようか。」
私達は皆が集まる所へ向かった。