――山本組と書かれた門の前で車を止めた。

「俺こいつ中に運ぶから椿、車駐車場に入れてきてくれね?」
「わかったぁ」
内心、『えー』とか思いつつ運転席に移動する。

高校生で車運転するって‥。
普通に無免だし。

「まぁ、兄ちゃんの頼みだし」
独り言を言いながら、アクセルを踏む。

無事に車を駐車場に入れ、家に入った。

「お帰りなさいやせ」
「うん、ただいま。
兄ちゃんは?」
「傷だらけの男を抱えて椿さんの隣の空き部屋に行きましたよ。」
「ん」

素っ気なく返事をして兄ちゃんの所に向かう。

――コンコン
ユックリドアを開ける。

「げっ。」
「げっ、って何よ。
失礼じゃない。」
頬を膨らます女。

「椿、ありがとう。」
その女の近くに兄ちゃんはいた。

「うん。
なんで亜由美さんがいんの?」
さっき頬を膨らませた女の名前は、亜由美さん。
40歳、病院の院長だったりする。

「こいつが怪我してるだろ?
だからよんだんだ。」
「‥‥。」
「なに?
私がいちゃ、駄目なの?」
睨んでくる亜由美さん。

「いや、別に。」
「ほっんと表情ないよね、椿。」
悲しそうに笑う亜由美さん。

別に関係ないじゃん、とか思いながら後頭部に手をおいて小さくため息をつく。

「じゃ、私帰るね。」
「ありがとう、亜由美さん。」
「ううん。
また何かあったらよんで。」
薬を置くだけおいて出て行った亜由美さん。

「‥兄ちゃん、明日学校でしょ?
いいよ、寝て。
私がこいつ見てるから。」
「大丈夫だよ。
サボるから。 一週間程。」

大丈夫なわけ?

顔に出てたのか、兄ちゃんが笑う。
「大丈夫。
俺、優等生だから今まで休んだ事ねーし。」
「‥そっか。」
私も笑う。