目を伏せた男がコーヒーに口を付けるのを見て初めて自分の口の中がカラカラに渇いていると気付く。


すっかり冷めたミルクティを飲む。


「……再婚、しないの」


呟くように訊くと、驚いた表情を見せる。


「美稀が死んで、その話も有耶無耶になったからな……」


「した方が、お姉ちゃんは喜ぶと思う」


「瑠稀はどうなんだ?」


「あたし……は……」


どうなんだろう。


「……悪い。いきなり言われても困るよな。お母さんには俺から言っておくから」


と苦笑して、コーヒーを飲み干した。


「何か食べるか?」


「え、あ、いいや。もう帰るから」


今日は長くなると思っていたから、バイトは休ませてもらっている。


店内の時計はすでに6時を差している。