「給料は決して高くはないが、それなりに溜まったから、こちらに来たと」


交通費と探偵に依頼したせいで大分使っただろうに、莉央に渡してくれと金が入った封筒を渡された。


受け取らず、自分で渡せと言ったが、結局渡さずに大阪に戻ったのだろう。


封筒を差し出した時に見えた爪が、


「爪が汚れていた。油で黒く。それだけでは1年も勤めていたのかは解らないが。あと、彼からは酒の臭いがしなかった」


隣で莉央が息を呑んだ。


「……今のところ、急な依頼は入っていない。彼の職場の住所も聞いた」


「……明日から休ませて。あと、住所教えて」


解った、と返事をしたところでバタバタと足音が聞こえた。


振り向くと、慌てた様子の瑠稀と目が合った。


「ルーク!莉央さん!柚季ちゃんがいないの!」


ベランダの戸を開け、大声で言う。