「分かってるよ。これはただの俺の我が儘だから」
ちゅ、と、軽く唇が触れる。不意打ちに驚いて目を瞑ると、暗闇の向こうからクックッと噛み殺しきれない声が聞こえた。
「も、もうっ……からかわないで下さいよっ!」
顔が真っ赤になるのを感じながら斎の肩を叩く。
「だってお前、キスするときいつも固まってるから。いい加減慣れろって」
そんなこと言ったって無理だ。多分これは、何万回したって慣れないと思う。
斎の顔が近づくだけで、あたしの心臓はドキドキ音を立てて暴れ出すんだから。
「頬が林檎みてぇに真っ赤だぞ?」
え。
どさっ、と。
あたしの身体が後ろに倒れる。
「え」
「そんなんじゃ、この先どーすんだよ……」
「あの」
もしかしてもしかして。あたし今、押し倒されてる……?
手首を押さえ付けるように掴まれ身動きがとれない。というか驚きと動揺で頭が働かない。
ただ口をパクパクと動かすことしかできなくて。
「い、つき……?」
「大丈夫だからなー」
だっ、大丈夫って何が!!何がですか!!?