遥登君が参ったように顔を顰める。それを聞いてあたしも不安になった。
櫻田君……どこに行ってるんだろう。
思い返してみれば、最近の彼は何となく元気がなかったように見える。もしかして何か悩みでもあったのかな。
「遥登君ありがとう、あたしちょっと探してきますね」
この眼鏡、櫻田君に返さなきゃ……っていうのは口実で、やっぱり心配だし。思い立ったらいてもたってもいられなくなって、あたしは遥登君に背を向け走り出そうとした。
「え、待って!今から探しに行くの?」
遥登君が驚いたように目を見開き、慌ててあたしの腕を掴んだ。
「はい」
短く返事をすると遥登君の表情が曇った。あたしを掴む力も強くなった気がする。
「もう日が落ちてる。別に今日じゃなくても―――」
あたしは遥登君の言葉を遮るように首を横に振った。
「どうせ部屋にいても気になっちゃうだけですし。それに、遅くならないうちに帰ってきます」
「……っ」
遥登君はまだ何か言いたそうだったけど、あたしが聞かないと分かったのかこれ以上は何も言わなかった。