「慎一兄さんはさ、昔から割とやんちゃな性格で」




雨の上がった夜空の下、ゆいちゃんを家まで送ったあたしたちは並んで寮へと向かっていた。



優しそうなゆいちゃんのお母さんにお礼を言われた時のことをぼんやり思い出しながら遥登君の言葉に耳を傾ける。






「叔父さんといっつも喧嘩してるイメージしかなくて」



「そうなんですか?」


確かに気の強そうな人ではあったけど、すごく暖かかった気がする。何ていうか根が優しいんだと思うな。





「でも、何でか俺にはいつも優しく接してくれたんだ。逢う度にぬいぐるみをくれてさ」



遥登君は空を見上げながら昔のことを思い出しているのか、少し遠い目をしながら笑う。






「俺は慎一兄さんが大好きだし、尊敬してる。人を幸せにできるって、すげぇことだと思うし」


その言葉を聞いて、さっきのゆいちゃんの笑顔が浮かんだ。確かに……人を幸せにするって容易いことじゃないもんね。




「あたしも、そう思います」


誰かを幸せに……。あたしにもできるかな。









「蒼空」