「ごめんねー怒鳴ったりして」


元の調子に戻ってあたしとゆいちゃんに笑いかけるけど、ゆいちゃんの表情は固く引き攣ったままだった。




「ほら見ろ、慎一兄さんが大きな声出すから怖がっちゃってるじゃないか」


「煩い。お前がややこしい真似するからだろ」




ようやく収まったと思った二人の争いが再び始まろうとした時、ゆいちゃんが痺れを切らしたように持っていたぬいぐるみをズイと二人の前に突き出した。



「きれいするー!」




顔をしかめてそう叫んだゆいちゃんは、もう慎一さんを怖がっている様子はなかった。



「んー?どうしたのかな」






「きれいするのー」


汚れてしまったぬいぐるみを大事そうに握り締めてゆいちゃんは訴えかけるような目で慎一さんを見つめる。




「それ、汚れちゃったみたいなんだ。慎一兄さん綺麗にしてやってくれないかな」







しゃがみ込んでゆいちゃんと同じ目線になった慎一さんがそのぬいぐるみを手に取る。少しだけ怪訝そうな顔をしたあと、すぐにニッコリ微笑んで。



「よし!じゃあお兄ちゃんがすぐに元通りにしてあげるからね」





……うわ、眩しい笑顔。