可愛らしい大きな看板が際立つそのお店。
沢山のぬいぐるみが綺麗に並べられていて、何気なく入ってしまいそうになる雰囲気を漂わせていた。
「俺の親戚が経営してるんだ」
「えっ」
自分で歩いていたゆいちゃんとあたしは遥登君に手を引かれお店の入り口となる大きな扉を通る。
数え切れない程のぬいぐるみの量。兎や熊などの動物をメインに、小さな人形なんかも飾ってあった。
きょろきょろと目を光らせながら辺りを見渡していると、遥登君がカウンターに向かって声を掛ける。
「慎一(シンイチ)兄さん」
「おー遥登じゃねぇか」
奥から出てきたのは遥登君と何となく同じような雰囲気で穏やかに笑う美形の男性だった。
茶色に染まった、本来はサラサラであるだろう髪の毛を遊ばせるように固めてアクセントに前髪をピンで止めている。
そんなお洒落な髪型とは裏腹に、スウェットにパーカーを羽織っただけのラフな格好。それですら様になってしまうほど整った顔をしているんだけど。
「久しぶりだな!」
慎一、と呼ばれるその人は顔を綻ばせながら縁の赤い眼鏡を外すとあたしたちに駆け寄ってきた。