傘を持ったままあたしの肩を抱いた遥登君が呆れた顔であたしを見つめる。
「周りの人は多分、俺たち三人が家族だと思ってるだろ」
「え!?」
それってつまり、あたしと遥登君が夫婦ってこと!?
頭がそう理解すると途端に恥ずかしくて死にそうになる。
「ふっ……なに動揺してんの」
「だってだって……っ」
あたしが慌てふためいているのを見て遥登君が可笑しそうに口元を緩ませる。
釣られたのか、ゆいちゃんもふふふと笑顔を溢した。
「お姉ちゃん変なのーっ」
なんて軽く馬鹿にされたような気もするけど、泣き止んでくれて良かった。
その後も遥登君にからかわれながらあたしたちは泥濘の道を歩いた。
そして不意に、遥登君が足を止める。
「着いたよ」
「え?」
傘の中からその建物を見上げれば……。
「ぬいぐるみ、専門店……?」