「名前、何て言うの?」






「……ゆい」



遥登君に抱っこされて、だいぶ落ち着いたみたい。女の子は目を擦りながら小さな声で答えた。





「ゆいちゃん、もう泣かなくていいよ。お兄ちゃんがぬいぐるみ綺麗にしてあげる」




遥登君が得意気にそう言って、空いてる手であたしの持っていた傘の柄を握った。






「遥登君、どこ行くんですか?」




「俺らが向かってたとこ、慎一兄さんなら元通りにしてくれると思う」



……?首を傾げて問うような表情をすると、遥登君は、ついてくれば分かると笑った。






これ以上何を答えてくれる気配もなかったので、あたしは大人しく彼の横を歩く。







隣でゆいちゃんを不安にさせないように優しく話し掛ける遥登君を見て、何だか……。




「ふふ、」



「何笑ってんの」






「だって遥登君、お父さんみたいです」




面倒見いいし、きっといいパパになりそう。そんな妄想を膨らませていると、自然と笑みが溢れてしまった。









「あのなぁ……」