照れ臭くて顔を上げられないまま大人しく遥登君の横を歩いてると、



「あ」





遥登君が声を上げた。



え、と顔を上げると目の前に小さな女の子がひとり。





黄色い傘を重そうに差しながら、その子は自分の持っているぬいぐるみを見つめ泣いていた。



多分それは兎のぬいぐるみ。……言葉を濁したのは、それが泥にまみれてはっきりと何かは分からなかったから。



「遥登君、あの子……」





「うん、水溜まりにでも落としちゃったのかな」



言いつつ、あたしたちはその子に駆け寄り腰を屈めて視線を合わせる。






「ね、どうしたの?」



遥登君が優しい声で問うと、女の子は泣きじゃくったままあたしたちの方を見て、ぬいぐるみを差し出した。





「転んじゃった……」



よく見ると女の子が着ていた服のお腹の辺りが汚れている。それに膝も擦りむいてるみたい。





「そっか、痛かったね。よしよし、おいで」



遥登君があたしに傘を渡し、両手を広げて女の子を抱き上げた。





お腹についた泥を手で優しく払ってあげながら、遥登君はにっこり微笑む。