慌てて身体を離そうと傘の外に飛び出す。
「あ、ちょっと蒼空」
冷たい雨が身体の熱を冷やしていくようで気持ちよかったけど、やがて急に寒気立つ。
ダメだ、風冷たい……!
「早くこっち来いって、まじで風邪引いちまうだろ」
「っ!」
突然変わった口調に驚き、ビクリ震わせた肩を遥登君に掴まれ傘の中に引き戻される。
遥登君は眉を寄せながらあたしの頭についた水滴を優しく払う。
「ご、ごめんなさい……」
申し訳なくて俯きながら謝ると、返ってきた遥登君の声は予想に反して穏やかで。
「いや、全然。……つか、んな意識してくれるなんて思わなかったから、ちょっと嬉しい」
あたしの頭の上に乗っていた手のひらが首裏に回る。そのまま引き寄せられるように力を込められ、あたしは遥登君を見上げた。
狭い傘の中、お互いの顔が近付くのは必然。だけど……。
「蒼空、目泳ぎすぎ」
フッ、と笑顔を向けられあたしはついに目を合わせることすら出来なくなってしまう。