あー……と言葉を濁して誤魔化そうとする彼を見て聞いちゃまずかったかなと思う。でも橘君は口を一度だけ結んですぐに開いた。
「最近、」
少しだけ、何となく声が震えている気がした。
「なーんか眠れなくて。毎日散歩してんだよ」
「毎日……?」
いつも授業中に寝てたあの橘君が眠れないなんて。それも毎日。
もしかして、何か悩み事があるのかな……。
微力なのは承知してるけど、あたしにも出来ることがあるならしてあげたい。
「あの、悩んでる事があるなら何でも相談して下さい。あたしじゃ頼りないかもしれないけど……」
そう言うと橘君は一瞬だけ目を見開いて、やがてクスクスと笑い出した。
なっ……!
「ちょっと!あたしは真剣に話してるんですよ!?」
顔を赤くしつつ猛抗議をする。一緒に悩んであげようとしてるのに……!
「違ぇよ。だって俺、お前のことで悩んでるんだぜ?」
「え?」