「どうしても必要なものなのか?」
「は、はい」
教科書を見ればテストもいい点数が取れると思うし。
「……じゃあ俺も行く」
厳しい目で考え込むようにしていた橘君はやがてふっと顔を上げるとあたしの手を取った。
「え!?」
困惑して固まるあたしの手を強く握ったまま、橘君は校舎に足を向けた。
「さっさと行くぞ」
「あ、……はいっ」
促され慌てて身体を動かす。こうしてあたしたちは真っ暗な学校へと足を踏み入れたのだった。
静まり返った廊下にあたしたちの歩く音だけが響く。……一人じゃなくてよかったかも。
職員室の明かりも消えてるみたいだし。
「あの、橘君」
教室を目指しながら、あたしはさっきから気になっていたことを聞いてみた。
「んー?」
「橘君はあたしに声を掛けてくれましたけど、どうしてあんなところにいたんですか?」
携帯で確認してみると、時刻は9時を回っている。こんな時間に橘君は何をしていたんだろう……?