「ひゃあっ……!?」
風の音の中、やけにはっきり聞こえた低い声にあたしはビクッと身体を震わせ悲鳴を上げてしまった。
慌てて振り返ればそこには橘君の姿があって、少し安心したあたしはへなへなとその場に座り込む。
……こ、腰抜けた。
「わり、驚かせちまったな」
橘君が申し訳なさそうに謝りながら、あたしの腕を引き腰を抱いて立ち上がらせる。
わ、と声を出したまだ上手く力の入らないあたしの身体を橘君は強く抱きしめた。
「っ、」
「よしよし」
あたしを落ち着かせようとしてくれているのは分かるけど、これじゃあ逆にドキドキして落ち着かないよ。
「も、もう平気ですっ……」
赤くなった顔を俯きながら隠して、それとなく身体を離す。
「つかお前、こんなとこで何してんだよ」
危ねぇだろ、とあたしを咎める橘君。本気で心配してくれてるのを感じて申し訳なくなる。
「あー……えっと、ちょっと学校に忘れ物しちゃいまして」