―――――何故、そこが?


松波が不安そうに様子を窺っているが、

俺は、視線の先が気になって仕方ない。


ふと、自然に視線が止まったそこには、

俺を更なるパニックの渦へ引き摺り込む光景が。



松波の……胸が………膨らんでいる?



何を動揺しているんだ?

俺はどうかしているようだ。


松波は『男』なんだから、

『女』みたいな“胸”があるワケない。


俺は何を勘違いしているのやら。

少しばかり、いつもと違う松波を見て

狼狽えるにもほどがある。


少し頭を冷やした方が良さそうだ。



「言い忘れたんだが、明日は朝一で実家へ行く」

「京夜様のご実家へですか?」

「あぁ、母親から電話があって」


いつもと変わらない口調の松波。

俺1人、狼狽えているとは情けない。


やはり、コイツは要注意人物だ。


「承知しました。他に何かございますか?」


平然と話を続ける松波。


「あっ、いや……それだけだ。電話中の所、邪魔して悪かったな」

「いえ、大丈夫です。お気遣いなく」