「き、京夜様ッ?!」


我に返った松波は、

慌ててベッドから飛び起きて、

すぐさまベッドサイドに直立不動になった。


「松波」

「……は、はい」


真っ青な顔で俺を見る松波。

そりゃあ、ノックもせずドアを開けたんだ。

驚くのは当然だろう。


けれど何故か、どことなく雰囲気が違う。

ベッドに寝転ぶ、素のアイツを見たからか?

―――――いや、何かが違う。

アイツがパニクる様子は何度も見ている。

なのに、何でか……今日の松波は違って見えた。



―――――ん? 何なんだ?

この違和感が納得いかず、

俺は松波をますます食い入るように見つめた。


すると、俺の眼光が鋭いせいなのか、


「あっ、ごめん朱夏。じゃあ、土曜日の10時ね?」


松波は電話相手に用件だけ伝え、

慌てて電話を切った。


そんな松波の声音に少し違和感を覚えた。



何かが引っかかる。

それは何なんだ?

俺は何を気にしてる?


別に松波が女と仲良くしてようが、

自室でだらけた格好をしてようが、

俺には一切、関係のない事だ。



―――――――なのに、何かが引っかかる。