「もう、これだから希和はダメなんだよ。『女』捨て過ぎ」
「だって~……」
「トリーバーチのリーバ。平べったい靴のこと」
「靴?リーバって靴のことなの?」
「うん、バレエシューズだよ」
「へぇ~。で、幾らするの?」
「う~ん、そうだなぁ……3万くらい?」
「えぇぇ~っ?!さ、3万ッ?!」
靴に3万って……恐ろしい……。
『くつ様』が歩いてるようなモノじゃない。
3万円あったら靴どころか、
上から下までトータルコーディネート出来るよ。
「御影の専務に頼んだら、安くしてくれるんじゃない?」
「えっ?何で?」
「確か、御影百貨店の中にショップがあったと思う」
「ホント?」
「いや、分かんないけど、多分。もし無くても、3万くらいなら安いもんじゃない?彼の相手をするんだもの。彼に払って貰えばいいよ」
「そんな簡単に言うけど…」
確かに、彼にとったら3万は何てことない額だと思う。
ただ、私が彼に『払って下さい』とは到底言えない。