バイクは小さな音楽教室の前でとまる。
ピアノの音色が外まで聞こえる。
「…ついたぞ。」
「…うん。」
窓からのぞく優ちゃんと、小学校低学年くらいの女の子。
優ちゃんは微笑ましそうに女の子を見ている。
…優ちゃんが教えてくれるならわたしもピアノやろっかな。
「…おい。もう行くぞ。」
「…え、もう?」
千広くんは少し呆れたような顔をする。
「優一は仕事中。」
勝手にエンジンをかける千広くん。
もう少し見ていたいのに、バイクは動き出してしまった。
意地悪なんだから……
見てるくらい優ちゃんは怒らないもん。