「だから、もう優ちゃんには会いません。」
梨子さんはため息をこぼし、髪をかきあげた。
「気に入らないな。」
「…え?」
「…あなた優一と付き合ってるんでしょう?」
「…それは、」
「…優一は昔からあなたを好きだった。」
梨子さんはわたしを見る。
「優一はずっと手を治す気だった。医者には二度とピアニストにはなれないと言われたのに。」
二度とピアニストにはなれない
そう言われたとき、優ちゃんはどんな気持ちだった?
「…全部あなたのため。絶対ピアニストになってあなたに気持ちを伝えたいって言ってた。」
嘘、
そう思ったけど、梨子さんが嘘をついてるなんて思えなかった。