「…うっ、」



涙が溢れる。



千広くんも泣いていた。



黙って唇を噛みながら頬に伝う涙を拭っていた。




「…比菜のせいじゃねぇ。」




ぎゅっと千広くんはわたしを抱きしめた。




千広くん、わたしは…
わたしは自分を許せないよ。





だって優ちゃんに酷い事をした。





“どうして弾かないの?優ちゃんに弾けない曲はないでしょ?”




どんな気持ちだった?
優ちゃん。



わたしのせいでピアノが弾けないのにね。



優ちゃんは弾けなくてもピアノの仕事をしてる。


そんなに大好きなピアノをわたしが、





わたしが、壊した。