そう思ったうちが、アホやった。
「・・・なら、ここだけ覚えて帰れ。これならできるだろ。」
「えっ。」
ここ、と言われたのは、今うちが難しいと叫んでる問題、証明問題の基本の基本。
「せめてここだけでも覚えて、明日なんでこうなるのか解き直せばいい。」
「でも、そうこうしてたら、6時まであと3分しかないやん!」
「本来なら、最初から最後までだぞ。かなりサービスしたつもりだ。」
れーくんは自分の手元の教科書とノートをパタリと閉めながら「とりあえずこの問題のこの一文だけ覚えろ」とうちの目をジッと見る。
「・・・・・・」
「最初からやるか?」
「一文覚えます。」
結局負けて、うちは小さな声でブツブツとその一文を読み続けた。
「れーくん、6時きたよー。」