「博斗様にっ!手を出さないでくださいっ!!」

 私は茫然と花梨さんを見つめていた。

 叩かれた右頬の痛みは、感じなかった。

 花梨さんの、私をぶったか細い左腕は小さく震えていて、小柄な体全体で怒りの感情を表している。

 花梨さんの、マッキーを想う気持ちが右頬の痛みと同時に痛いほど伝わってきて、胸がズキズキと痛んだ。

「花梨!ミッキーには手ェ出すな!」

 マッキーが叫んだ。叫びながら、花梨さんの肩を掴む。

「どうしてっ…!私のが、前から好きだったのにっ…!」

 花梨さんがマッキーに訴えた。

「結婚できる…って、凄く…っ、嬉しかったのに…っ!」

 花梨さんの言葉が胸に突き刺さる。

 花梨さんの苦しみが、自分の痛みのように感じられて、気が付くと私の頬を涙が伝っていた。