「私っていう婚約者がいるのにっ!」

 泣きわめきながら花梨さんはマッキーにすがりつく。

「婚約はしねぇって言ってんだろ」

 腰に回された、花梨さんの白い腕を振りほどいてマッキーは低い声で言った。

 花梨さんは、俯いたままマッキーの胸を押した。

 そして、部屋の中に入ってくると、私がいるベッドの隣に立った。

 ベッドの中の、裸の私を見て花梨さんは目を見開く。

「…あなた…名前は…?」

 花梨さんが、鋭い声で聞いてきた。

「東城…美紀です」

 花梨さんの顔色を窺いながら言った途端。

 ――パシンッ!!!

 乾いた音と共に、頬を痛みが駆け抜けた。