理香さんはまた、麦茶を飲みました。
「ごめんね、斉藤さん。
自分も攻撃されるのが怖くて、あなたに嫌な思いをさせちゃった」
「そんな……」
「けど、ほんとバカバカしいよね。
私たち、なにも悪い事してないじゃない?
受け入れたくない人には、受け入れられなくたっていいから。
堂々としていようと思ったの。
絵はどこでも描けるし、BLの話はネットですればいいから」
いつもあまり話さないのには、理由があったのですね。
今はこんなに流暢に話せるのに。
きっと、ずっと、我慢していたのですね。
「でも、理香さんがやめてしまうと寂しいです」
「斉藤さんもやめたらいいじゃない」
「ボクは美大を受けるので、今オネエ先生の元を離れるわけにはいきません。
そして、悪いことをしていないのに、こっちがやめるなんて、それこそバカバカしいじゃありませんか」