「奈霧、もしお前が、私に従うのなら、あの娘の世話を続けてやろう。」

これが、彼との繋がりの最初の契約。
光璃に呼ばれるのは、大体、全ての色官達が寝静まった夜だった。奈霧は相手にバレないようにため息をもらした。光璃は椅子に腰掛けている。

「芙蓉は…無事なんですか?…一目でいいんです…あわせてください」
「無論、お前を動かすための材料なのだから、無事に決まっていよう?芙蓉の体は弱く、私の力があるからこそ健康な体を保つことが出来ている。寧ろもっと感謝してもらいたいものだな」
「あなたは…何をお望みで?」
「…至高の存在になりたいんだよ…。何者にも屈することのない、誰にも支配されることのない、勿論、天神楽にもね…」

息苦しく、身動きの取れない、泥沼に入ってしまった最悪の気分だ。奈霧を紫仁衆に送り込んだのも光璃の命令だ。志臣はどうかは知らないが、空平は光璃のキナ臭さに気付いているだろう。光璃は一見劣勢とも見えるその状況をむしろ楽しんでいた。

「朱巫女をこの宮から飛ばしたのは間違いだったかな、他の星の運命まで廻り出している。…一番はこの一件で志臣がもう傀儡ではいてくれそうにないというところだけれどね…」