いつもと違う感覚に疑問を覚えながら、雛生は目を覚ます。起き上がると掛かっていた上布団がぱさりと落ちて、自分が裸な事に気づく。あれ?昨夜…考えるより前に隣の独りであればあるはずのない温もりに驚いて身動ぎする。

「あれ?おはよう…雛ちゃん早いね」
「し…おみ…おはよう」

昨日の記憶が鮮やかに甦って、雛生は顔を真っ赤にさせた。

「おれ的には歓迎なんだけど、前丸見え」

柔らかく笑って、志臣はいった。さらに雛生は顔を赤くし、拳を志臣の鳩尾に入れたあと、布団にぐるぐるにくるまって隠れる。

「…ばかじゃないの?!」
「綺麗な体なんだから、隠しちゃ勿体無いよー」
「見せ物じゃないの!もう少し、志臣は女性に対しての礼儀とか学んだ方が良いわよ!!」
「昨夜は礼儀を欠かなかったつもりはないけど?」

ばっ、と志臣の方を向いて雛生は言い返す為の言葉を探すが、見つからず、もう、と小さく呟いた。志臣は、その様子に微笑んだ。そして、布団のなかから雛生をひきずりだす。

「ちょ…」
「決めたよ、おれの道。おれは雛生と長い時間を歩ける方法を探す。もう迷わない。紫族の業に従うこともしない。おれは、精一杯我が儘を通す、その為に戦う。」

剣で戦わないと決めていたけれど、そう言って、横にあった剣を持つ。その剣は王族に代々伝わると言われているものだ。いつも志臣はそれを持っているだけだ。そのまま抱き締められる。雛生を逃さないと主張してるみたいだ。素肌から直に伝わるぬくもり。心臓の音が聞こえてしまいそうだ。雛生も志臣を抱き締め返した。

「うん…」