ー…
「おまえのものよ、春礼。彼にはあたくしが透茉と名付けたの。これから仲良くなさい」
それは突然の話で、人見知りの強い春礼は母の横で思わず硬直した。目の前で頭を垂れた透茉と呼ばれたその少年はこちらを静かに見つめ返した。温度のない目線はひんやりとしていて春礼に少しの恐怖を植え付けるのに充分だった。気の強い母は、難しいかしらねぇ?と言いながらも透茉を春礼のそばに置くことは決定らしく、撤回する気は無いようだった。
(こんな怖そうな人となんてやってけないよ…)
こちらを見るだけでまったく喋ろうとしない透茉と暮らす長い日々を想像して春礼は途方に暮れていた。
それからというものの、春礼のあとを常に追いかける背の高い透茉の存在はやはりただ怖いだけのものだった。けれど黙って追いかけるわけではないいちいち注意するのだ、しかも無表情な顔で。この前庭先で花を見ていただけで怒られたのだ。春礼は自分が鈍いせいで透茉が苛立っているのだろうと思い、目を盗んで行動することに全力を挙げることになった。
「おまえのものよ、春礼。彼にはあたくしが透茉と名付けたの。これから仲良くなさい」
それは突然の話で、人見知りの強い春礼は母の横で思わず硬直した。目の前で頭を垂れた透茉と呼ばれたその少年はこちらを静かに見つめ返した。温度のない目線はひんやりとしていて春礼に少しの恐怖を植え付けるのに充分だった。気の強い母は、難しいかしらねぇ?と言いながらも透茉を春礼のそばに置くことは決定らしく、撤回する気は無いようだった。
(こんな怖そうな人となんてやってけないよ…)
こちらを見るだけでまったく喋ろうとしない透茉と暮らす長い日々を想像して春礼は途方に暮れていた。
それからというものの、春礼のあとを常に追いかける背の高い透茉の存在はやはりただ怖いだけのものだった。けれど黙って追いかけるわけではないいちいち注意するのだ、しかも無表情な顔で。この前庭先で花を見ていただけで怒られたのだ。春礼は自分が鈍いせいで透茉が苛立っているのだろうと思い、目を盗んで行動することに全力を挙げることになった。