「おれは解放される道を選びたい、出来ることなら、この国を変えたい。誰も犠牲にならないように」
「…といいますと?」
「香倶殿と、お話をしようと思う」
「…建国史のお方ですよね」

志臣は葉深に頷いた。霞瑠国創始については世間に隠された秘密がある。香倶は、その創始を語る上で鍵のようなものだ。

「香倶殿は…おれを食い殺そうするだろうけどね…」
「私は反対です。あまりに無謀すぎる」
「雛が、生きる努力をしてくれというんだ」

葉深は顔をあげて、志臣を見た。葉深もかつての自分と同じだ。諦めた目で未来を見つめ、終わりを待つ。けれど、もう、待つばかりではいけないことを知ってしまった。

「和臣さまはご存知ですか?」
「父上には話した…最初こそ反対していたが、許しをいただいた」

葉深は厳しい目つきで志臣をみた。
「…本気なんですね?」
「空平も、賛成してくれた」
「…賛成するしかないじゃないですか」

その志臣の言葉に葉深は呆れながら笑った。志臣は至って真面目な顔で、もう一度葉深を見た。