鍬錠の間では楽しそうな祭の声とは裏腹に悲しそうな男たちの声がしていた。

「ああ、悲しき事かな」
「そうやって窓から外見る暇があったら、少しでも早く手を動かしてくださいよ!主上」
「祭の日にも仕事って、おれも雛と回りたいよぅぅう」

机の上で書類に目を通しながら、志臣は女性ならばほっとかないであろう端麗な容姿で切なそうなため息をついた。
目の前の葉深はいつものことなので気にもとめない。

「奥方様とは回れないですよ?ご存知でしょう?主上と朱巫女様は白知の塔で鑑賞するのが決まりですから」
「いい、そこは妄想で補うから」

志臣の言った言葉に葉深は、この主上大丈夫か?と本気で頭の心配する。

「ああ、そういえば、主上。漆蕾の病、今のところ、おさまってきているようですよ。」
「そうか、よかった」

葉深は志臣が優れない顔をしている事に目敏く気付き、どうかされました?と聞く。