ずっとなんてないことは、雪佳は知っていた。透茉も銀様も、もう寿命が近いことも。けれど、家族ごっこのようなこの暮らしを少しでも長く続けたいのだ。


透璃は透茉と剣の稽古中に話していた会話を思い出していた。

『透璃はずっとぶすっとしているな』
『ぶすっともするだろうよ。なんで、オレあんな阿呆みたいなのほほん娘の相手しなきゃいけないわけ?』
『阿呆、か』

透璃の言葉に透茉は大爆笑した。透茉はいつも表情筋の死んだような顔をしているのでとても驚いた。

『んだよ!』
『いや、悪い。昔、お前と同じようなことを思ってたヤツがいたなあ、って』
『それって…』
『いいか、透璃。あの方々は芯の強い、かけがえのない方々だ。お前もいつかわかるだろう。それがわかり、護ると、心に誓えた時が我々、透を冠する者が生まれた瞬間だ。』

透璃は透茉を心底格好いいと思った。だから、透茉に従うようになった。


透璃は雪佳と手を繋いだまま呟いた。
「護るから」

雪佳は聞こえたのか聞こえなかったのかわか らないが、そっと透璃の手を握り返した。