「ねぇ!あれはなに??」
「雪佳、おねがいだから、もっと落ち着いて行動しろよ!」
「透璃ってば、おじーちゃんみたいね!」
「誰がジジィだ!おい!」

横笛や太鼓の音、品物を売る商人たちの声でいつになく宮の中は騒がしかった。雪佳は跳んだり跳ねたりはしゃいで、追いかける透璃ばげっそりしていた。

透璃は七歳の頃、透茉に連れられてこの宮にきた。雪佳は同い年だが、赤子の時から宮にいる。次代の銀様になるべく雪佳は同じ部屋で過ごす、外に出ることは滅多な事が無い限りしないという。

新しい透の字を冠する者を従えて、やっと出歩く事を許されるのだ。 祭囃子が透璃にはどんなに珍しくなかろうと、雪佳にとっては初めての外で、きらきらしているんだろう。

透茉が、自分達が彼女に出来ることは無に等しいと、けれど傍にいるのは、彼女自身を守るためではなく、彼女の心を守るためなのだろうと言っていた。

『永い時を一人で過ごしては、心を壊してしまうから…だから、歴代の銀と透の関係は、夫婦のような人たちもいれば、親子や、きょうだいのような方々もいた』

透茉が永い時間を経て、銀様と思い通じている事は容易に想像できた。