そんなに見られていたなんて、知らなかった。あの頃、必死に舞い、うたう自分が志臣の目にそんな風に映っていたというのは不思議な感覚だった。

昔を語る彼は、いつもよりも遠く感じれて、知らない男の顔に見えた。

「でも、色決めの儀式の前日、うたってる君が泣きだした時、母上ではない小さな女の子を改めて見つけたんだ」
「じゃあ、あの時、私を…」

抱き締めたのは、

「おれだよ」

優しい瞳が細められる。静かだった心臓がどきどきとする。志臣が優しく雛生の手を掴む、そして、口づけを落とした。

熱が、そこからあがっていくみたいだった。

「どうしたら、おれがどれくらい君を愛しているか伝えられるんだろう?」

志臣の切なさを持った声が耳の奥にじんと響く。

「…るよ」
「え?」
「なんでもない…」

充分、伝わってるよ。

志臣の綺麗な顔は戸惑いをうつしていた。雛生は目をゆっくり閉じた。