「…いつから私のことが好きなの?」
雛生は志臣を見ずに聞く。馬鹿な質問だな、と我ながら苦笑する。
雛生は昔から、自分のことが好きではなかった、許せなかった。意地ばかり張る気の強い自分、胡兎に手をさしのべなかった自分、何の力も持てず、誰も助けられない自分。
何を見て、志臣は自分を好きになってくれたんだろう。雛生にはいつも疑問だった。
「すごい、昔から。雛生は有名だったんだよ。一番舞とうたが上手いって」
知ってた?と志臣はこちらを見た。雛生は気まずくなって、顔を伏せながら、知らないと呟いた。
「母上も舞とうたが素晴らしい方だったらしくて、俺は見たことがなかったから、噂だけの君にとても興味をもったんだ、部屋を抜け出して、茗琅館の窓を覗いた。天女様が舞ってるみたいだった」
「…天女様って…」
志臣の言い方は大袈裟の様に感じれて恥ずかしかったが、志臣はまるで気づかないらしく、甘い笑顔を雛生に向けて、本当のことだよ、と笑った。
「何回も何回も見て、多分、母上に重ねて見てたんだろうな。物心つく前から衰弱する母上とは離されて暮らしてたから、母上はきっとこんな風に舞って、うたうんだろう、って。君に励まされてたんだと思う」
雛生は志臣を見ずに聞く。馬鹿な質問だな、と我ながら苦笑する。
雛生は昔から、自分のことが好きではなかった、許せなかった。意地ばかり張る気の強い自分、胡兎に手をさしのべなかった自分、何の力も持てず、誰も助けられない自分。
何を見て、志臣は自分を好きになってくれたんだろう。雛生にはいつも疑問だった。
「すごい、昔から。雛生は有名だったんだよ。一番舞とうたが上手いって」
知ってた?と志臣はこちらを見た。雛生は気まずくなって、顔を伏せながら、知らないと呟いた。
「母上も舞とうたが素晴らしい方だったらしくて、俺は見たことがなかったから、噂だけの君にとても興味をもったんだ、部屋を抜け出して、茗琅館の窓を覗いた。天女様が舞ってるみたいだった」
「…天女様って…」
志臣の言い方は大袈裟の様に感じれて恥ずかしかったが、志臣はまるで気づかないらしく、甘い笑顔を雛生に向けて、本当のことだよ、と笑った。
「何回も何回も見て、多分、母上に重ねて見てたんだろうな。物心つく前から衰弱する母上とは離されて暮らしてたから、母上はきっとこんな風に舞って、うたうんだろう、って。君に励まされてたんだと思う」