「察しがいい游ならわかるでしょう?私があと何日の人間か」

生気に満ちた人間とは言い難い、穏やかで緩やかな衰退の色を示す靄が沚依にはかかっていた。なんで、と口から出そうになった言葉を寸前で止めた。

「…そう、」

喰われるわけではなく、死ぬことが許されたのか。

あの囲われた宮から逃げたのは正解なのか?
逃げたのは誰なのか。
許されるべきは、許されないべきは誰なのか。

あの頃の…

「游?どうかした?」
「…いや…なんでもない」

游は、何も言葉が浮かばず、立ち上がった。そろそろ戻るわ、と沚依に告げ、顔も見ずに外に出た。

屋敷の外には満月に近い欠けた月が浮かんでいた。それを見ながら舜秋祭が近い事を思い出す。祭りは満月の夜執り行われるからだ。