第一に、帝である志臣はしっているのだろうか。光璃が知っている以上、先代の帝が知らないわけがない。しかし、その歴史自体が業だというのだろうか。

その歴史を閲覧することが出来るとすれば、白官の管理する蔵に入らなくてはならない。

奈霧はそこまで考えたところで、歩を止め、窓を見る。明るい満月に近い月がこちらを見ているようだった。息を吐き出す、呼吸が出来ていない様な閉塞感はどこからくるのだろうか。

「あれ?奈霧?なんでいるのー?」
「あ…明乎」

内心、どきりとしたせいで反応が遅れる。ここは紫官と一部の色官しか入る事許されていない区域なのだ。しかし、明乎の方が紫仁衆になったからか、と勝手に納得してくれたので、それに合わせる。

「帰ってきたのか」
「そうそう、明日にでも奈霧の部屋に行こうって思ってたんだよー。」

いつもと変わらない明るい口調、笑顔、どれだけ、どれだけ俺は救われているんだろう。

奈霧は明乎の頬に触れる。少しびっくりした顔でこちらをみて、またはにかんだようになあに?と笑った。

守りたいと、自分の立場を弁えずに思ってしまう。このまま光璃の傀儡で居続ければ、崩壊すると、わかっているのに。

確かめるように、奈霧は明乎に口付けた。それは、罪を重ねる行為で、今この瞬間も裏切り続けている。

ー…