私には、お父さんがいなかった。 でも、そんなお母さんを見る度にお母さんがいるだけで十分。 そう心から、思っていた。 お父さんという存在を、ずっと海の底に沈め続けた。 深く、深く――― お母さんが死ぬその日まで、ずっと。