都会の夜の風は、骨まで染みる。


身体が震える音が、他人に聞こえるかもしれない、と思う程の寒さだった。


私は、黒のロングコートと共に闇に溶け込んでいた。


このロングコートは、先輩の紫雨さんのお下がりだ。


少し年期が入っている。


私は、このコートを着る度に人知れず一筋の涙を流す。


夜はその場所に丁度、良い。


「もしも~し」


携帯を取り出し、ある番号へと繋ぐ。