―やめてくれ!― 夜を敷いた暗がりの中、白髪の男は男を失った様に、声を震わせた。 ここは、一件のビルの中。 既にひけ腰なこの男は、確か中学生の娘がいる父親で、普通のサラリーマン。 つまり、どこにでもいる普通の男。 ―ああ、もう手間かけさせないでよ~― 私は、半笑いして男に近づいた。