放課後、そーちゃんはあの子の元へ。
私は玄関へと向っていた。

(…そーちゃん、何て答えるんだろうな。)
決して告白とは限らない。
でもきっと…それだろう。
もしも、あの二人が付き合ったら
それこそ美男美女、と言う言葉が相応しいカップルになるだろう。
私に手が届くことはないだろうな。


私は下足箱からローファーを取り出し靴を履き替える。
何を買ってもらおうか、と考えながら玄関を出た。
…、…、…。
駄目だとは分かっている。
(…っでも)
私の足先が向ったのは校門ではなく、裏庭だった。



(っ!居た)
覗き見なんてばれたら、これこそ嫌われてしまう。
女の子は頬を染めながら何かを伝えているようだった。
(告白、…だよね)
そーちゃんは困った様な、でも少し嬉しそうな表情を浮かべている。
二人の会話は小さく、少ししか聞き取れなかった。
「ーーで、これ。よければーーと!」
「まじ?うわ、さんきゅ!」
「っいえ、私もその、ありがとうございます。」
「いいって!俺も嬉しいよ、そう言ってもらえて。」
「なかなか、その、話しかけ難くて。」
「あー…」


(何の、話しをしているの…?)
何を言われたの?
今彼女が渡したのは、何?
彼女はそーちゃんに、小さな子包を手渡したのだ。
リボンで綺麗にラッピングされた、小包を。


「あのっ、蒼空くん。」
「んー?」
「ーーてくれて、ありがとうございます。」
「ん!俺も嬉しかった。」
「喜んで、もらえるかな。」
「当たり前!俺もーー好きだし!」


「え、っ?」
今、そーちゃん、何て?
思わず声が出てしまう。
そーちゃん、嬉しいの?
今、そーちゃん、”好き”って


「じゃ、じゃあ!また明日…!」
「おう、また明日な。」


そーちゃんが此方に歩いてくる。
嫌、いや、イヤ…嫌だ嫌だ


そーちゃんは、あの子が、好き?


私は何も考えられなくなっていた。
もっと冷静に、なるべきだったのだろう。
訳もわからず私は走って逃げた。


「なぎ?おい!!!前!!!!」




誰かが言っていた。
”初恋は実らない”
私は信じたくなかったよ。
でも、もう忘れなきゃ。


忘れなきゃ。



大きなクラクションと騒音が響き渡る。
「なぎー!!!!!」
私の意識はそこで途絶えた。



瞼の裏側には、懐かしい笑顔があった。