何よりも、誰よりも近い存在だった君。
でもそんな私達は、ずっと背中合わせだったね。



「あ、あのっ」
「んー?」
時は放課後、うちのクラスに見覚えのない子が男子へ話しかけていた。
聞きたいわけではない、勝手に聞こえてしまうのだ。
「えっと、蒼空くん、居ますか?」
「?蒼空なら、おーい!そら!お前に用あるみてーよ」


第一印象は、本当に女の子。
ふわふわとした雰囲気、話し方。
私とは何かが違うような気がした。


「んあ、俺?」
「あ、っあの。蒼空くん。」
「んー?」
「今日、これから少し時間、ありますか?」
「?、まあ、少しなら。」
「あ、ありがとう!じゃあ裏庭で、待ってます。」


…これ、は。
「おいおいおい、蒼空クーン。」
「な、なんだよ。」
「ったくよー、モテる男は羨ましいねェ。」
「ばっ、何言ってんだよ。別そんなんじゃねえだろ?」
「どうだかなァ、雰囲気的には、なァ?」
「どう考えても、な?」
「-っうるせえよ!馬鹿!」
「ふは怒んなって!」



あの子、きっと…。
凄くいい子そうだったな、告白、なのかな。
どうやら放課後の約束は延長になりそうだ。
そんな事を考えながら、私は荷物を纏め始めた。
「あっ、なぎ!」
「?ーーなに。」
「ちょっと遅れるけど、校門のトコで待ってて!」
「な、あんた別に今日じゃなくたって、」
「いいから!なぎとの約束、破るわけにいかねーだろ?」
「…、分かった。」
「ん、さんきゅ。」


深い意味なんて無いんだろうと分かっている。
分かっている、けれど。
嬉しくないと言えば嘘になるだろう。
現に緩んでいる口元を隠している。
「…ばかだ。」
誰も居なくなった教室で、私は小さく呟いた。



そーちゃん、あのね。
私、あの時嬉しかったよ。

約束、守ろうとしてくれた事。
凄く凄く、嬉しかったよ。
なのに、なのに。
ごめんね。