「渚おはよ。」
「おはよー」

教室に入ればまた何時もの学校が始まる。
そーちゃんも同じクラスだ。

「そらー!おはよ!」
「ちーす!おはようなー!」
「ふは、そらお前寝癖ついてるし。」
「は!?どこ!」
「いいんじゃねー?それで御洒落じゃん」


何時ものメンバーと仲良く話すそーちゃん。
私もつい可笑しくて笑ってしまう。
「あーもう!なぎ!直して!」
「な、私?自分でしなよ。」
「お願い!今日帰り何か奢るから!な?」
「…絶対ね。」
「ん!」


そう言うと数回頷き大人しく座るそーちゃん。
ぴょこん、と跳ねている髪をワックスで直してやる。
「はい、できた」
「さんきゅ!」
「っとにお前等、仲良いよな。」
「ほんとだよー、蒼空君、渚には懐いてるよね。」
「?普通じゃないの?」
「「普通じゃない」」


数人の男女が声を揃えるものだから、私は苦笑いを浮かべた。
「懐いてるっつか、なぎは特別!」
「「!?」」
「ちょっ、馬鹿!誤解されるような言い方しないでよ!」
「-?別に間違ってはないだろ?」
「お前等付き合ってんの?」
「ちがっ付き合ってない!ただの幼馴染!」
「ああ!幼馴染なのかー、だから仲良いのね。」
「良いなー、幼馴染。」


女子が少し羨ましそうに呟いていた。
そーちゃんは髪の色素が元々薄くて、若干癖っ毛。
ふわふわとした雰囲気で、例えるならば猫だろう。
誰にでも明るく接するそーちゃん、モテないはずが無かった。


誰もが羨む私の場所。
でも私は此処が大嫌いだった。
幼馴染なんかじゃなくて、普通の女の子のほうがずっと良かった。

そーちゃんの言った”特別”
私の言った”幼馴染”
何よりも胸を締め付けた。
特別だ、何て言わないでよ。


そんな会話をしたおかげで、私は朝からもやもやとした一日を過ごす。
放課後、何を買ってもらおうかと考えているうちに授業は過ぎていった。


ふと窓を見ると、そこには大きくて見据えることなど出来ない
綺麗な青空が広がっていた。