「なあ、なぎー。」
「んー?」
「俺、結構長い事お前を見てきてるじゃん?」
「まあ、うん?そうだね。」
「一つ気になってることがあるわけ。」
「な、何。」
「お前、今まで好きな奴って出来たことあんの?」
「…は?」

このくだらない話を早く終わらせてしまいたい。
登校中に聞かれたこの質問。
確かに二人の間で恋愛について話すことはあまりなかった。
好きな人、それくらい私にも居るのだが。

「別に、普通です普通。」
「なっ、答えになってねえから!それ!」
「まあ居た?んじゃない?多分。」
「…お母さんは心配です。」
「何時から私のお母さんになったのそーちゃん。」
「うっせ、お前も女なんだから好きな奴くらいできるだろ?」
「女じゃないのかも。」
「!?」

冗談だよ、と返す私に何時もの笑顔を向けてくるそーちゃん。



好きな人は居ますか?
はい。

あの頃から私の気持ちは変わらない。
今でも覚えているあの言葉。


私はそーちゃんが好きです。


心の中で小さく呟いて、隣に居る君を見て。
あの頃と変わらないその笑顔が大好きで。
大きくなるにつれて何かが離れた私達。
今も十分に近い存在だけれど、何よりも遠く感じた。


今までの関係を壊したくない私。
幼馴染では足りない私。
そんな自分が入り混じっていて、今まで何もできなかった。


私は信じていたよ。
あの頃の約束はきっと、叶うって。
二人の気持ちは変わらないって。
信じていたよ。



大きくなった私達は
本当の恋を知る。




誰より近くて遠い君。
そんな君に恋した春。