「これ、なぁに?」

 美愛が興味津々って顔で聞いてくる。

「自由帳だよ。知らねぇの?」

 俺が聞くと、美愛はコックンと頷いた。

「知らない」

 俺は鉛筆で白い紙に線を書いた。

「すごーい!」

 美愛が感嘆の声を上げた。

 たった一本の線を書いただけでこんなに褒められるとは思ってなかった俺は、美愛の反応に照れた。

 いつまで俺の傍にいるかわからないヤツに、ここまでしたのは初めてだった。

「これ好きー!」

 美愛の「好き」が俺以外の物に告げられる。なんだか、凄く嫌になった。なんだろ、この気持ち。凄くモヤモヤする。

「でも、玲央にゃんが一番好きー!」

 美愛のその言葉に、モヤモヤした感情は雲が消えてくみたいに晴れ渡って行った。