水原くんは何も言わない。

というより、言葉が何も浮かばないようだ。



そして、わたしも何も言葉が浮かばなかった。




「俺が、その女に電話かけてまで水原と別れるように言った理由は、それだけだ。じゃあな」


順也くんはわたしたちに背を向ける。

そして、公園から出て行った。



………水原くん……………。

ちらっと水原くんの顔を見ると、さっきと同じ表情で、全く動いていなかった。



「水原くん…」

わたしが呼びながら服の裾を引っ張ると、水原くんはビクッとして、こっちを向いた。

「あ………」


放心状態って、こういうことを言うのかな……。



気づけば日はすでに落ちていて、空はだんだん暗くなっていた。