オレはゾッとした。


まるで腰より下には何もないような感覚。


しかし布団の中を覗くとちゃんとある。


どういうことだ?


もう1度足を動かそうとしてみるが、まったく動かない。


「っ!」


動けよ!


オレの足だろ?!


早く千夏のところに行ってやりたいんだよ!


頼むよ…!


動け!


動いてくれ!










何度も何度も試みた。


息がきれるまで何度も何度も。


でも1度だって動くことはなかった。


オレは自分の足が鉄の塊のように思えた。


「ハァハァ…っくそ!!!!!」


バァァァンッ!!


オレは悔しいようなもどかしいような何とも言えない気持ちになり、自分の右足を思いっきり殴って叫んだ。


それを聞いてやっと我に返った母さんはビックリしてオレを見ている。


「ど、どうしたのよ?」


母さんはなにも知らないようだった。


オレの足が動かないことを…。


そんなこと少し考えればわかることなのに、オレはイライラしてつい怒鳴ってしまう。


「ハァ…『どうしたのよ?』じゃねぇよ!!」


母さんはキョトンとしたまま突っ立っている。


当たり前だ。


人の体のことなんて誰でもわかるはずかない。


「…ごめん…。」


オレは急に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、母さんにボソッと謝った。


「そんなこといいのよ。それよりどうしたの?いきなり叫んで、…自分の足まで殴って…。痛かったでしょ?大丈夫?」


母さんはオレが訳もわからずキレたことなんか気にせずに、優しく話しかけてくれた。


しかもオレの勝手な行動の心配までしてくれている。


母さんはオレの足を痛くないかと優しくさすってくれている。


それでオレは気づいた。