オレは今、真っ暗な空間にたった1本敷かれた真っ白い道のようなものの上に立っている。
この道のようなものはおそらくカーペットだろう。
オレはキョロキョロとあたりを見渡してみた。
カーペットの両端は触ろうとしても触れず、ただ真っ暗な空間が広がっているだけだった。
オレの後ろと前には果てしなく真っ白いカーペットが続いている。
オレは最初向いていた方向に向き直した。
…え。
オレがいる場所から少し離れた場所には、千夏(チナツ)が立っていた。
「…千夏?」
オレは一応その人物が千夏であることを確認するために名前を呼んでみた。
「…。」
でも、オレが呼びかけても返事をしてくれない。
ただ涙を流しながら突っ立っているだけだ。
なんでだ?
オレがわからないのか?
返事してくれよ…。
なぁ、千夏?
せっかく会えたのに…こんなのねぇよ!
たった1回返事をしてくれなかっただけで諦めてたまるかよ!
オレはもう1度千夏に呼びかけてみる。
「おい、千夏。オレだよ。涼だよ。」
「りょ…う?」
やっと返事をした千夏の声は、消えてしまいそうなほど小さな声だった。
しかしそんなわずかな声も確実に聞きとる。
ちょっとの言葉でも聞き逃したくはない。
よかったぁ。
少し安心する。
その安心も束の間。
「りょぉ…。」
千夏はオレの名前愛おしそうに呼んだ。
そしてさっきまでとは違い、声を上げて泣き出した。
!?
「どうしたんだ?!」
なんで泣いてるんだ?
嬉しくて泣いてるのか?
…いや違う。
千夏はきっと悲しくて泣いてる。
自分でもビックリした。
なんで自信を持って悲しそうだと思えたのか。
しかし、今はそんなことどうでもいい。
オレは何も言わずにただ泣いてる千夏をすぐに抱きしめてやりたくて走った。
全力で。
千夏のいる方へ。
道のりは思ったより長かった。
おそらく100mは軽く走っただろう。
…ん?
オレはふと疑問に思った。
ふつう100m以上離れたら、いくら目のいいやつでも、相手の顔がはっきり見えるはずがない。
じゃあ、なんでさっきオレは千夏の顔がはっきり見えたんだ?
走りながらオレは考えた。
そして気づく。
オレが走れば走るほど千夏がどんどん遠くにいってしまっていることに。
それでも少しでも千夏に近づくためにオレは、これまで走ったことないような速さで走った。
ただただ必死だった。
千夏を今すぐ抱きしめてやりたい気持ちが溢れそうだった。
500mは走っただろうか。
いくら必死で体力のあるオレでも、全力、いや、全力以上の速さで500mはキツイ。
息がだいぶ上がってきたとき、